眠ろうと思って、もう何度も目を閉じた。
でも、眠れなかった。
部屋の電気は消している。
スマホも見ないようにしている。
布団の中で、体だけは横になっている。
それなのに、頭の中だけがずっと起きていた。
今日のこと。
明日のこと。
昔のこと。
まだ起きていないこと。
考えなくてもいいことばかりが、夜の中で順番に浮かんでくる。
眠りたい。
ただ眠りたいだけなのに。
時計を見るたびに、朝が少しずつ近づいていた。
眠れないことが不安になる
最初は、少し眠れないだけだと思っていた。
そのうち眠くなる。
目を閉じていれば大丈夫。
そう思っていた。
でも、時間が過ぎるほど、眠れないこと自体が不安になっていった。
今寝ないと、明日つらい。
あと何時間眠れるだろう。
明日の朝、ちゃんと起きられるだろうか。
そう考え始めると、余計に眠れなくなった。
眠らなきゃと思うほど、頭が冴えていく。
静かな部屋の中で、時計の数字だけが責めてくるように見えた。
考えごとが止まらない
今日、あの言い方は変じゃなかっただろうか。
返信を返すのが少し遅かったかもしれない。
明日の予定、うまくできるだろうか。
将来、このままでいいのだろうか。
ひとつ考えると、別の不安がつながって出てきた。
小さなことから、大きなことまで。
全部が同じ夜の中に並んでいた。
昼間なら、そこまで深く考えなかったかもしれない。
でも、夜の布団の中では、どれも大事な問題のように見えた。
頭の中で答えを出そうとしているのに、どれにも答えは出なかった。
部屋が静かすぎる
部屋は静かだった。
静かすぎて、自分の呼吸が聞こえる。
布団が少しこすれる音も聞こえる。
外を遠くで車が通る音がして、また静かになる。
周りの部屋も、街も、もう眠っているようだった。
自分だけが起きている。
そんな気がした。
本当は、どこかに同じように眠れない人がいるのかもしれない。
でも、この部屋の中では、自分だけが夜に取り残されているように感じた。
静けさが、眠れない自分を余計にはっきりさせていた。
スマホを見たくなる
見ない方がいいとわかっていた。
でも、何度もスマホを見たくなった。
時間を確認したい。
何かを読めば気が紛れるかもしれない。
誰かの投稿を見れば、少し現実から離れられるかもしれない。
そう思った。
でも、スマホを見たら、もっと眠れなくなる気もした。
画面の明るさ。
流れてくる情報。
誰かの生活。
余計な不安を拾ってしまうかもしれない。
私は枕元に置いたスマホを見ないように、体の向きを変えた。
でも、見ないようにしていること自体が、また気になった。
朝が近づいてくる
カーテンの向こうが、ほんの少しだけ明るくなってきた気がした。
まだ夜なのか。
もう朝なのか。
その境目みたいな時間だった。
私は少し焦った。
眠れないまま朝になるのが怖かった。
夜のうちに不安を終わらせて、朝には何もなかった顔で起きたかった。
でも、朝は待ってくれない。
眠れたかどうかに関係なく、時間は進んでいく。
今日が終わらないまま、明日が近づいてくる。
その感じが、少し苦しかった。
眠れない自分を責める
どうして眠れないんだろう。
ちゃんと寝ればいいだけなのに。
スマホも見ていない。
電気も消している。
横にもなっている。
それなのに眠れない。
私は布団の中で、自分に少し腹を立てていた。
でも、眠れないことを責めても、眠くなるわけではなかった。
むしろ、責めるほど体に力が入った。
肩が少し固くなっていることに気づいた。
手を握っていたことにも気づいた。
眠れない夜の中で、私はずっとがんばって眠ろうとしていた。
ただ横になっているだけでもいい
ふと、もう眠ることを少し諦めてもいいのかもしれないと思った。
諦めると言っても、起き上がるわけではない。
ただ、今すぐ眠らなきゃと自分を追い込むのを少しやめる。
目を閉じて、横になっているだけでもいいことにする。
眠れていなくても、体は休んでいる。
何も考えないことはできなくても、布団の中にいることはできている。
そう思ったら、ほんの少しだけ力が抜けた。
不安が全部消えたわけではない。
でも、眠れない自分を責める声が少し小さくなった。
眠れないまま朝が近づく夜の終わり
カーテンの向こうは、少しずつ明るくなっていた。
結局、どれくらい眠れたのかはわからない。
ほとんど眠れていない気もする。
少しだけうとうとした気もする。
不安はまだ残っている。
でも、夜は少しずつ終わろうとしていた。
眠れない夜がある。
考えごとが止まらない夜がある。
朝が近づくほど、焦ってしまう夜がある。
でも、そんな夜を過ごした自分を責めなくてもいいのかもしれない。
眠れなかったのは、怠けたからではない。
心が少し忙しかっただけかもしれない。
体が休む準備をするまでに、時間がかかっただけかもしれない。
今夜をうまく眠れなかったとしても、それで自分がだめになるわけではない。
私は目を閉じたまま、小さく息を吐いた。
眠れないまま朝が近づいた夜。
それでも、ここまで横になって過ごした自分を、少しだけ許すことにした。

