朝、LINEを送った。
たいした内容ではなかった。
少し聞きたいことがあって、少しだけ話したいことがあって、短い文章を送っただけだった。
送った直後は、すぐに返ってくる気がしていた。
でも、昼になっても返信は来なかった。
夕方になっても、通知は鳴らなかった。
夜になって、部屋の電気をつけたころ。
私はふと思った。
今日、私はずっと返信を待っていただけだったのかもしれない。
朝は普通だった
朝は、そんなに気にしていなかった。
送信ボタンを押して、スマホを置いた。
そのうち返ってくるだろうと思った。
相手にも予定がある。
仕事かもしれない。
寝ているのかもしれない。
忙しいのかもしれない。
そう考える余裕があった。
でも、時間が少しずつ過ぎるにつれて、スマホの静けさが気になり始めた。
通知が来るたびに、少し期待した。
でも、待っている相手ではなかった。
そのたびに、気持ちが少しずつ沈んでいった。
何かをしていても気になる
洗濯をした。
でも、洗濯機が回っている間にスマホを見た。
ごはんを食べた。
でも、食べながら通知欄を確認した。
動画を流した。
でも、内容はほとんど入ってこなかった。
何かをしているようで、心はずっと返信の方を向いていた。
画面が光らないか。
通知音が鳴らないか。
既読がついていないか。
そればかりを気にしていた。
体は部屋にいるのに、気持ちはずっとトーク画面の中にいた。
送った文章をまた読む
何度も、送った文章を読み返した。
朝に送ったときは普通に見えた言葉が、昼には少し重く見えた。
夕方には、少し変な言い方だった気もしてきた。
夜には、もう送らなければよかったように思えてきた。
短すぎたかもしれない。
逆に、近すぎたかもしれない。
返しにくい内容だったかもしれない。
相手は、どう返せばいいかわからなくなっているのかもしれない。
そんなことを考えながら、同じ文章を何度も見た。
読み返すたびに安心するどころか、不安の形が増えていった。
予定があったはずの日
本当は、今日はやりたいことがあった。
少し片づけをしたかった。
買い物にも行こうと思っていた。
読みかけの本もあった。
明日の準備も、早めに終わらせるつもりだった。
でも、気づけばどれも中途半端だった。
買い物には行かなかった。
本は開いたまま数ページで止まっていた。
部屋も、朝とあまり変わっていなかった。
何もしていないわけではない。
でも、何かをちゃんとした感じがなかった。
一日が、返信を待つ時間に薄く溶けてしまったようだった。
返信がないだけなのに
返信がないだけ。
そう言えば、それだけのことだった。
相手が忙しいだけかもしれない。
スマホを見ていないだけかもしれない。
返すタイミングを逃しただけかもしれない。
それなのに、私はその「だけ」に一日を渡してしまった気がした。
返事が来ないことで、自分まで止まってしまった。
相手の一言が来るまで、今日を始められなかった。
そんなふうに感じて、少しだけ情けなくなった。
でも、情けないと思っても、気になるものは気になった。
夜になってしまった
外が暗くなって、部屋の中も少しずつ暗くなった。
私はようやく電気をつけた。
明るくなった部屋を見て、少しだけ現実に戻った気がした。
テーブルの上には、朝から置いたままのカップがあった。
洗濯物は、まだたたんでいなかった。
スマホは、相変わらず静かだった。
今日一日、何をしていたんだろう。
そう思った。
返信を待っていた。
その答えしか浮かばなかった。
それが少し悲しかった。
追いLINEを打って消す
もう一度送ろうかと思った。
「忙しかったらごめんね。」
「返信いつでも大丈夫だよ。」
「変なこと送ってたらごめん。」
そう打ってみた。
でも、どれも送れなかった。
送ったら、余計に気にしていることが伝わってしまう。
相手に負担をかけるかもしれない。
返事を急かしているように見えるかもしれない。
安心したくて送りたいのに、送ったあとでまた別の不安が始まる気がした。
私は全部消した。
画面には、朝送った文章だけが残った。
少しだけスマホを離す
私はスマホを机の端に置いた。
手がすぐ届かない場所に置いた。
完全に忘れることはできない。
でも、すぐ見られる場所にあると、何度でも見てしまう。
その代わりに、カップを流しに持っていった。
洗濯物を少しだけたたんだ。
部屋のカーテンを閉めた。
小さなことをひとつずつした。
返信はまだ来ていない。
でも、私の時間まで全部止めなくてもいいのかもしれない。
そう思いたかった。
返信を待つだけで一日が終わった夜
その夜、返信はまだ来なかった。
でも、私はスマホを見ない時間を少しだけ作った。
それだけで、不安が消えたわけではない。
相手の気持ちがわかったわけでもない。
でも、返信がないことだけで、今日の自分を全部だめにしなくてもいいと思いたかった。
返信を待つだけで一日が終わったように感じる夜がある。
通知ひとつに気持ちを預けてしまう日がある。
相手の反応が来ないだけで、自分の時間まで止まってしまうことがある。
でも、まだ何も決まっていない。
嫌われたと決まったわけではない。
終わったと決まったわけでもない。
今夜の私は、ただ待つことに疲れているだけかもしれない。
私はスマホを少し遠くに置いたまま、部屋の明かりを落とした。
返信が来るかどうかは、まだわからない。
でも、今夜の自分まで画面の中に置きっぱなしにしなくてもいい。
そう思いながら、小さく息を吐いた。

