通知が鳴らない夜|返信を待って不安になる短い話

夜に読む短い話

通知が鳴らない。

ただ、それだけの夜だった。

誰かに責められたわけではない。

冷たい言葉を返されたわけでもない。

既読無視されたと決まったわけでもない。

それなのに、スマホが静かなままでいることが、少しずつ胸を重くしていった。

さっき送ったLINEは、まだ返ってこない。

画面をつけても、何も変わっていない。

通知欄は空っぽだった。

送ったあとから気になっていた

送る前は、そんなに大げさなことだと思っていなかった。

少し聞きたいことがあって、少し話したいことがあって、短い文章を送っただけだった。

でも、送信ボタンを押したあとから、急にその文章が気になり始めた。

変なタイミングだったかもしれない。

忙しい時間だったかもしれない。

急に送られて、迷惑だったかもしれない。

送る前には見えていなかった不安が、送ったあとになって次々に出てきた。

もう送ってしまった。

その事実だけが、手の中で重くなっていた。

スマホを伏せても気になる

スマホを伏せた。

見なければ気にならないと思った。

でも、見えなくなっただけで、気持ちはスマホの方へ向いたままだった。

通知が鳴った気がして、顔を上げる。

でも、何も鳴っていない。

少しして、また鳴ったような気がする。

やっぱり鳴っていない。

部屋は静かだった。

冷蔵庫の音。

外を通る車の音。

自分の息の音。

その中に、待っている通知だけがなかった。

静かすぎるスマホは、何も言わないのに、何かを言っているように感じた。

何度も画面を見る

結局、またスマホを手に取った。

画面をつける。

通知はない。

トーク画面を開く。

返信はない。

少し前に自分が送った文章だけが、そこに残っていた。

何度も見ているうちに、その文章が少しずつ違って見えてくる。

明るすぎたかもしれない。

距離が近すぎたかもしれない。

相手が返しにくい内容だったかもしれない。

さっきまでは普通に見えていた言葉が、だんだん失敗の証拠みたいに見えてきた。

たった数行の文章に、自分の不安が全部集まっていくようだった。

他の通知に反応してしまう

別のアプリから通知が来た。

一瞬、心臓が跳ねた。

でも、待っていた相手ではなかった。

セールのお知らせだった。

少しだけがっかりして、すぐに閉じた。

そのあとも、スマホが光るたびに期待してしまった。

でも、違う通知ばかりだった。

ニュース。

おすすめ動画。

使っていないアプリのお知らせ。

どれも、今の私にはいらないものだった。

欲しい通知だけが来ない。

ただそれだけで、自分が誰からも選ばれていないような気がしてしまった。

嫌われたのかもしれない

返信が来ない時間が長くなるほど、考えは悪い方へ進んでいった。

嫌われたのかもしれない。

面倒だと思われたのかもしれない。

距離を置かれているのかもしれない。

本当は、まだ何もわかっていない。

相手はお風呂に入っているだけかもしれない。

寝てしまっただけかもしれない。

スマホを見ていないだけかもしれない。

それなのに、不安な夜は、まだ起きていないことまで勝手に決めてしまう。

返事がないだけで、関係の全部が悪くなったように感じてしまう。

追いLINEを打って消す

もう一度送ろうかと思った。

「忙しかったらごめんね。」

「変な時間に送ってごめん。」

「返信いつでも大丈夫。」

そう打ってみた。

でも、送れなかった。

それを送ったら、もっと重く見えるかもしれない。

気にしていることが伝わってしまうかもしれない。

相手に余計な負担をかけるかもしれない。

安心したくて送りたいのに、送ったあとでまた不安になる気がした。

私は打った文字を全部消した。

何もなかったみたいに、画面は元に戻った。

でも、心の中では、何度も送って、何度も消していた。

静かな夜に置いておく

少しだけ、スマホを遠くに置いた。

完全に気にしないことはできなかった。

でも、これ以上見ていると、通知のない画面に自分の価値まで決められてしまいそうだった。

返信がない。

ただ、それだけ。

嫌われたと決まったわけではない。

迷惑だったと決まったわけでもない。

終わったと決まったわけでもない。

今わかっていることは、通知がまだ鳴っていないということだけだった。

私はそれを、静かな夜の中に置いておくことにした。

通知が鳴らない夜の終わり

布団に入っても、少しだけ耳がスマホを待っていた。

鳴るかもしれない。

光るかもしれない。

返ってくるかもしれない。

そう思いながら、目を閉じた。

不安は、まだ少し残っていた。

でも、その不安が全部本当とは限らない。

通知が鳴らない夜にも、まだ決まっていないことがある。

相手の気持ちも。

明日の返事も。

この関係の続きも。

今夜の私は、ただ待つことに少し疲れているだけかもしれない。

スマホは静かなままだった。

それでも、私は小さく息を吐いて、画面を見ないまま目を閉じた。

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