後ろに何かいる気がした夜|誰もいない部屋で怖くなる短い話

夜に読む短い話

夜、部屋でひとりでいた。

テレビはつけていない。

スマホの音も消していた。

部屋の中には、冷蔵庫の音と、自分がページをめくる音だけがあった。

何も起きていない。

いつも通りの夜だった。

それなのに、ふとした瞬間、背中のあたりがぞわっとした。

後ろに何かいる気がした。

もちろん、そんなはずはない。

この部屋には自分しかいない。

玄関の鍵も閉めた。

窓も閉めた。

誰かがいるはずはない。

そうわかっているのに、背中だけが先に怖がっていた。

振り向きたいのに怖い

振り向けばいいだけだった。

後ろを見て、何もないことを確認すればいい。

それだけで済むはずだった。

でも、振り向く直前がいちばん怖かった。

もし何か見えたらどうしよう。

そんなことはないとわかっている。

でも、怖い想像は一度浮かぶと消えにくい。

私は手に持っていた本を閉じた。

部屋の空気が、さっきより少しだけ重く感じた。

背中の後ろ。

ソファの向こう。

部屋の隅。

見えない場所が、急に存在感を持ち始めた。

音がしないことが怖い

何か音がしたわけではなかった。

足音もない。

物が落ちた音もない。

ドアが開いた音もない。

むしろ、静かすぎた。

その静けさが、かえって怖かった。

音がしないのに、何かを感じる。

何も見ていないのに、そこに意識が向いてしまう。

自分の呼吸だけが、少し大きく聞こえた。

息を止めると、部屋の静けさがもっとはっきりした。

何もない。

何もないはず。

そう思うほど、後ろが気になった。

何度も確認した場所

さっきまで、部屋の中は全部見えていた。

机の上。

棚の前。

カーテンのあたり。

ドアの近く。

どこにも何もなかった。

それなのに、目を離した場所が、すぐに不安な場所に変わる。

見ていない間に何か変わった気がしてしまう。

そんなはずはない。

でも、夜の部屋では、確認していない場所が少しずつ怖くなる。

私はゆっくりと首を動かした。

でも、途中で止まった。

振り向く勇気が、少しだけ足りなかった。

スマホの明かりをつけた

私はテーブルの上のスマホを手に取った。

画面をつけると、白い光が手元を照らした。

それだけで、少しだけ現実に戻ってきた感じがした。

時間は、思っていたより遅かった。

もうすぐ日付が変わるころだった。

眠いわけではない。

でも、頭は少し疲れていたのかもしれない。

昼間なら気にならないようなことが、夜になると大きくなる。

そう思いながら、スマホの明かりを頼りに、ゆっくり後ろを見た。

そこには何もなかった

後ろには、何もなかった。

ソファの背もたれ。

壁。

床に置いたクッション。

さっきと同じ部屋だった。

当たり前のように、何もいなかった。

私は小さく息を吐いた。

安心した。

でも、同時に少し疲れた。

何もなかったのに、こんなに怖かった。

何も起きていないのに、体だけが先に反応していた。

怖さは、出来事がなくても生まれることがある。

見えない場所と、静かな部屋と、疲れた心が重なるだけで、こんなふうに不安になることがある。

もう一度、部屋を見る

私は立ち上がって、部屋の電気を少し明るくした。

さっきよりも部屋の隅が見えた。

カーテンも閉まっている。

ドアも閉まっている。

玄関の方から音もしない。

何も変わっていなかった。

それでも、明るくなった部屋を見ると、少しだけ安心できた。

怖いと思ったら、明るくしてもいい。

確認してもいい。

自分を無理に強く見せなくてもいい。

そう思うと、さっきまで背中に集まっていた緊張が少しずつほどけていった。

後ろに何かいる気がした夜の終わり

その夜、私は小さな明かりをつけたまま過ごした。

テレビはつけなかった。

でも、部屋の中に少しだけ光があるだけで、静けさはさっきよりやわらかく感じた。

後ろに何かいる気がした夜。

誰もいないはずなのに、気配を感じた夜。

それは、実際に何かがいたからではないのかもしれない。

心が少し疲れていて、見えない場所に敏感になっていただけかもしれない。

夜の静けさが、自分の不安を大きくしていただけかもしれない。

何もなかった。

でも、怖かった気持ちは本物だった。

だから、その気持ちまで否定しなくていい。

私は部屋の明かりを小さく残して、布団に入った。

背中の方が少し気になったけれど、さっきよりは大丈夫だった。

今夜は、何もないことを一度確認できた。

それだけで十分な夜にすることにした。

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