カーテンの隙間|夜の窓が気になって眠れない短い話

夜に読む短い話

寝る前に、部屋の電気を消した。

布団に入って、スマホを少し見て、それから画面も暗くした。

部屋の中は静かだった。

冷蔵庫の音が遠くで聞こえて、外を車が通る音がたまにした。

いつもと同じ夜のはずだった。

でも、目を閉じようとしたとき、カーテンの隙間が気になった。

ほんの少しだけ開いている。

指一本分くらいの細い隙間。

そこから、窓の暗さが見えていた。

閉めたはずだった

カーテンは、ちゃんと閉めたつもりだった。

寝る前に部屋を整えるとき、いつものように端を引いた。

それなのに、少しだけ隙間ができていた。

昼間なら、気にもならない幅だったと思う。

でも夜になると、その細さが妙に気になった。

外から何かが見えるわけではない。

誰かがいるわけでもない。

ただ、暗い窓が少しだけ見えている。

それだけなのに、そこに意識が吸い寄せられてしまった。

暗い窓は何も映さない

窓の外は暗かった。

街灯の光が少しだけ入っているけれど、外の様子はよく見えない。

昼間なら、建物や空や道が見える場所。

でも夜の窓は、ただ黒い面みたいに見える。

何も見えない。

だからこそ、余計に気になる。

見えない場所があると、そこに何かを想像してしまう。

何もないはずなのに。

見えるものが少ないだけなのに。

頭の中だけが勝手に動き出す。

私は布団の中で、カーテンの隙間から目をそらそうとした。

でも、そらそうとするほど気になった。

誰かが見ている気がする

もちろん、そんなはずはない。

ここは自分の部屋で、窓の外に誰かがいるとは思えない。

階数もある。

カーテンもほとんど閉まっている。

わかっている。

それでも、夜の不安は「わかっている」だけでは止まらない。

カーテンの隙間から、外の暗さがこちらを見ているような気がした。

本当は、ただの窓。

ただの布の隙間。

ただの夜。

それなのに、そこだけ部屋の中と外がつながっているようで落ち着かなかった。

閉めに行けばいいだけ

起き上がって、カーテンを閉めればいい。

本当に、それだけのことだった。

でも、布団から出るのが少し怖かった。

部屋の電気は消えている。

カーテンまでは、たった数歩。

それなのに、暗い部屋を歩いて窓に近づくことが、少しだけ嫌だった。

近づいたとき、外を見てしまったらどうしよう。

何もないとわかっているのに、何かを確かめる瞬間が怖い。

私は布団の中で、しばらく動けなかった。

スマホの明かりをつける

結局、スマホの画面をつけた。

暗い部屋の中で、白い光が手元だけを明るくした。

その明るさで少し安心した。

でも、画面の外にある部屋はまだ暗いままだった。

私はスマホを懐中電灯みたいに持って、ゆっくり起き上がった。

床に足を下ろす。

冷たい。

カーテンの方を見る。

隙間は、さっきと同じように細く開いていた。

何かが動いたわけではない。

何かが見えたわけでもない。

ただ、ずっとそこにあった。

窓の前に立つ

カーテンの前まで歩いた。

近づいてみると、隙間は本当に小さかった。

外は暗い。

でも、何も見えない。

見えないことが少し怖くて、でも何も見えないことに少し安心した。

私はカーテンの端を引いた。

布が少し重く動いて、隙間が消えた。

それだけで、部屋の中が少し閉じたような気がした。

外とつながっていた細い線が、ようやく消えた。

大げさかもしれない。

でも、その瞬間、少しだけ息がしやすくなった。

戻った部屋

布団に戻ると、部屋はさっきより落ち着いて見えた。

暗さは同じだった。

音も同じだった。

冷蔵庫の音も、外の車の音も、何も変わっていない。

でも、カーテンの隙間がなくなっただけで、部屋の輪郭が少しやさしくなった気がした。

怖かったのは、窓そのものではなかったのかもしれない。

見えない外が、少しだけ見えていたこと。

そこに何かを想像してしまったこと。

自分の部屋に、確認できない場所が残っていたこと。

それが落ち着かなかったのかもしれない。

カーテンの隙間の終わり

布団の中で、もう一度目を閉じた。

今度は、さっきよりも少しだけ眠れそうだった。

カーテンは閉まっている。

窓の外は見えない。

部屋の中には、自分の呼吸と、いつもの生活音だけがあった。

夜の窓が怖くなることがある。

カーテンの隙間が、妙に気になることがある。

何もないとわかっていても、暗さの向こうに何かを想像してしまう夜がある。

でも、そんな自分を責めなくてもいいのかもしれない。

怖いなら、閉めればいい。

小さな明かりをつけてもいい。

安心できる形に部屋を整えてもいい。

今夜は、カーテンをちゃんと閉めた。

それだけで十分な夜にすることにした。

私は布団の中で、小さく息を吐いた。

外の暗さは、もう部屋の中までは入ってこなかった。

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