既読がついたのに返ってこない夜|LINEの返信を待つ短い話

夜に読む短い話

既読がついた。

それを見た瞬間、少しだけ安心した。

読んでくれた。

届いていた。

無視されているわけではなかった。

そう思った。

でも、その安心は長く続かなかった。

既読がついたあと、返信は来なかった。

一分。

五分。

十分。

画面は何も変わらない。

さっきまで欲しかったはずの既読が、今度は別の不安に変わっていった。

読んだのに、返ってこない。

その事実だけが、夜の部屋の中で少しずつ重くなっていった。

既読がつけば安心すると思っていた

既読がつくまでは、読まれていないことが不安だった。

届いていないのかもしれない。

通知に気づいていないのかもしれない。

忙しくて見られないのかもしれない。

そう思いながら、何度も画面を開いた。

だから、既読の文字を見たとき、少しほっとした。

でも、すぐに別の考えが浮かんだ。

読んだのに、返さないんだ。

その言葉が頭の中に出てきた瞬間、さっきの安心は小さくしぼんだ。

何て返せばいいか迷っているのかもしれない

最初は、相手にも事情があると思おうとした。

返信を考えているのかもしれない。

あとで返そうと思っているのかもしれない。

読んだところで別の用事が入ったのかもしれない。

スマホを閉じただけかもしれない。

そう考えれば、まだ大丈夫な気がした。

でも、時間が経つほど、その考えを信じるのが難しくなった。

本当にあとで返すつもりなら、もう返ってきてもいいのではないか。

そんなふうに思ってしまう。

自分で自分を落ち着かせようとして、自分でまた不安に戻っていた。

送った文章が急に怖くなる

もう一度、自分が送った文章を読んだ。

送る前は、何度も確認した。

これなら大丈夫だと思って送った。

でも、既読がついたまま返ってこないと、その文章が急に怖く見えてくる。

重かったかもしれない。

返しにくかったかもしれない。

相手を困らせたかもしれない。

もっと軽く送ればよかった。

絵文字をつければよかった。

最後の一文はいらなかったかもしれない。

そんなふうに、送った言葉を何度も分解していた。

もう相手の画面には届いている。

読まれている。

それなのに、今さら直したくなっていた。

既読の文字だけを見る

トーク画面の下にある、小さな既読の文字。

ただの表示なのに、その文字ばかり見てしまう。

読まれた証拠。

でも、返ってこない証拠。

同じ文字が、安心にも不安にも見える。

私は画面を閉じた。

でも、またすぐ開いた。

何も変わっていない。

既読の文字だけが、さっきと同じ場所にある。

相手の気持ちは何も書かれていない。

怒っているとも、嫌っているとも、忙しいとも書かれていない。

それなのに、私はその小さな文字から、いろんな意味を読み取ろうとしていた。

別のことをしても戻ってくる

動画を見ようとした。

でも、内容が入ってこなかった。

本を開いた。

でも、同じ行を何度も読んでいた。

お風呂に入ろうと思った。

でも、その間に返信が来たらどうしようと思った。

来たら来たで、すぐ返さないといけない気がした。

来なければ来ないで、また不安になる。

どちらにしても、心がスマホから離れなかった。

私は今日、相手の返信を待つためだけに存在しているみたいだった。

そんなふうに思って、少し疲れた。

既読無視という言葉が浮かぶ

既読無視。

その言葉を思い浮かべたくなかった。

でも、浮かんでしまった。

本当に無視されているのかはわからない。

相手はただ忙しいだけかもしれない。

あとで返すつもりかもしれない。

でも、既読がついたまま時間が過ぎるほど、その言葉が近づいてくる。

無視された。

嫌われた。

面倒だと思われた。

距離を置かれている。

そんな言葉が、まだ決まっていないことを勝手に決めようとしていた。

追いLINEを考える

もう一度送ろうかと思った。

「ごめん、変なこと言った?」
「返信いつでも大丈夫だよ。」
「忙しかったらごめんね。」

いくつか打って、全部消した。

送ったら、余計に重くなる気がした。

でも、送らないと、このまま何も変わらない気もした。

安心したくて送りたい。

でも、安心したくて送った言葉で、また不安になりそうだった。

私は結局、何も送らなかった。

画面には、既読がついたままの会話だけが残っていた。

今わかっていることだけにする

しばらくして、私はスマホを机の上に置いた。

画面を下にして、少しだけ遠ざけた。

不安は消えなかった。

でも、これ以上見続けると、既読の文字だけで自分の価値まで決めてしまいそうだった。

今わかっていることは、読まれたこと。

そして、まだ返信が来ていないこと。

それだけだった。

嫌われたかどうかは、まだわからない。

面倒だと思われたかどうかも、まだわからない。

関係が終わったかどうかなんて、もっとわからない。

そうやって、少しだけ事実を小さくした。

不安が大きくしすぎたものを、少しだけ元の大きさに戻したかった。

既読がついたのに返ってこない夜の終わり

その夜、返信は来ないままだった。

私は何度かスマホを見そうになって、そのたびに少しだけ我慢した。

完全には忘れられなかった。

でも、見ない時間を少しだけ作った。

既読がついたのに返ってこない夜がある。

読まれたことがわかったからこそ、不安になる夜がある。

何を思われたのか、どう受け取られたのか、答えがほしくて苦しくなる夜がある。

でも、既読の文字だけで、すべてが決まったわけではない。

相手の事情も。

返せない理由も。

明日の続きも。

今はまだ、何も見えていないだけかもしれない。

私はスマホを少し遠くに置いたまま、部屋の明かりを落とした。

読まれたのに返ってこない。

その不安を抱えたままでも、今夜を少し休ませていい。

そう思いながら、布団の中で小さく息を吐いた。

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